認知症とこころ ~増加原因の具体例~

前回のお話で、社会・生活の変化が認知症患者の増加と関わりがあるとお伝えしました。

身近な例を挙げてみようと思います。

日常生活の一つ、「買い物」について。
昔は、肉は肉屋さん、魚は魚屋さん、野菜は八百屋さんなど、それぞれ馴染みの個人商店で買い物していました。
今はスーパーマーケットが各地域に出来て、一つのお店で肉も魚も野菜も買い物出来るようになりました。

さて、この事が認知症増加と、どのような関係があるのでしょう?
今から挙げる例はどちらも、物忘れのある、一人暮らしのおばあちゃんの話です。

例1
〈昔〉

おばあちゃんは、魚屋さんで秋刀魚を5匹買おうとしました。
魚屋さんはおばあちゃんが一人暮らしと知ってます。
「おばあちゃん、5匹買ったら魚が悪くなるから、1匹にしたら⁈」
「それも、そうね1匹にしようかね」と言っておばあちゃんは秋刀魚を1匹だけ買っておいしく食べました。

〈現在〉
おばあちゃんはスーパーマーケットで5匹の秋刀魚を買います。
家に帰り、秋刀魚を1匹焼いて食べました、残りの4匹は大事に冷蔵庫の奥に入れておきました。
2週間後、おばあちゃんは冷蔵庫を覗いてみると腐った秋刀魚を4匹見つけ、捨てる事になりました。

例2
〈昔〉
ある日、おばあちゃんは八百屋さんで、野菜を買おうとしました。
お会計の時にお金が足りない事に気付きました。
すると、八百屋の大将が「今度来たときに残りはもらうよ」と言ってくれて、野菜を買う事が出来ました。
3日後、おばあちゃんが八百屋に買い物に行きました、おばあちゃんは前回お金が足りなかった事を忘れていましたが、
八百屋の大将に「この前足りなかった分、もらっとくね」言われて、おばあちゃんは「そうやったね」と言ってその分を支払いました。

〈現在〉
おばあちゃんはスーパーマーケットで、野菜を買おうとしました。
お会計の時にお金が足りない事に気付きました。
欲しかった野菜は買えずに家に帰り、また後で買いに行こうと思いました。
家に帰ると疲れてしまって、その日はもう買い物はやめにしました。

(スーパーマーケットによっては対応してくれるとこもあるかもしれませんが、一般論的に考えた場合です。)

このように、「買い物」といった一例ではありますが、昔と現在の違いは明らかです。
物忘れのある、お年寄りにとっては顔なじみの個人商店のスタイルの方が不自由なく買い物しやすかったという現実があります。
意外と見逃しがちですが、地域の繋がりが希薄化した現代社会自体が「認知症」の患者増加の大きな原因の一つと言えるでしょう。